今日はアニポケの物語内で「運命」と評される、リコとアメジオの因縁について深く考えてみたいと思います。敵対する立場でありながら、どこか共鳴し合う2人の繋がりは、一体どのようなものなのでしょうか?
リコとアメジオの出会い

まずは第1話での出会いから振り返りましょう。リコが通うセキエイ学園に姿を現した青年・アメジオ。彼はリコが持つ“不思議なペンダント”を狙い、最初は穏便に譲り受けようとしますが、リコが疑念を抱いて逃げたことで強硬策に転じます。
この瞬間、2人はまさに「狙う者」と「狙われる者」という厳然たる敵対関係にありました。しかし物語が進むにつれ見えてくるのは、アメジオが“必要以上の暴力”を望まない、ある種の紳士的な一面を持つということ。さらに後々登場する、リコを洗脳したり雪山で遭難させたりする“真に極悪非道なキャラクター”の存在が、相対的にアメジオの生真面目な性格を際立たせるのです。
アメジオのこの性格がエクスプローラーズの中で孤立する原因にもなり、「愛すべき不器用さ」として、ただの悪役以上の印象を視聴者に与えています。

共闘と対話
やがて、リコとアメジオの関係性には徐々に変化が表れます。当初は互いのことを「テラパゴスを狙う敵」「テラパゴスを持つ娘」としか見ていなかった二人ですが、共闘や相互理解の場面を経て、単なる敵対関係以上の絆や因縁が生まれていきます。
黒いレックウザ戦での共闘

次に注目したいのが、第45話で起こった黒いレックウザとの戦闘です。アメジオは、リコやフリード率いるライジングボルテッカーズとここで一時的に共闘を果たします。
本来なら敵のはずのリコを庇い、“りゅうのはどう”から守ったアメジオの姿には、馴れ合うつもりはないが、かといって眼の前で傷つこうとしているのを放ってもおけないという彼なりの騎士道のような精神が見え隠れしています。彼はエクスプローラーズの一員でありながら、単純な悪役にとどまらない。そこに“人間らしさ”を感じるのです。
雪山での対話

さらに大きな転機となったのが、第65話、タイトルどおり「リコとアメジオ」が雪深いナッペ山の洞窟に閉じ込められたエピソードです。閉ざされた空間で、2人は火を囲みながら初めて腹を割って会話することになります。
ここでアメジオは、「祖父ギベオンの願いを叶えるため」に旅をしているという自分の目的を初めて明かし、リコも「祖母から受け継いだテラパゴスの願いを叶えるため」に冒険を続けていると打ち明けるのです。
脱出成功後、リコは「目的が同じなら協力できるのでは?」と持ちかけるが、アメジオは「目的が同じであろうと、道はことなる」と協力関係の継続を拒みます。それでも別れ際に彼が「スピネルに気をつけろ」とリコへ警告を残す場面には、明らかな友情ではないにせよ、単なる敵意とも異なる思いやりが感じられました。
敵対関係を超えて協力せざるを得ない極限状態──そこで分かり合う2人の姿から、私たちはある種の“奇妙な共感”を感じ取ります。立場や背景が異なる者同士でも、互いの“根源的な願い”を知ったとき、想いが重なる瞬間があるのだと。
アメジオの立場の変化
洞窟での出来事の後、アメジオはエクスプローラーズ内で窮地に立たされます。スピネルの策略によって「リコに手を貸す裏切り者」のように仕立て上げられ、祖父ギベオンから「お前の顔は見たくない」とまで言い放たれてしまうのです。アメジオが最も認められたい相手の信頼を失いながらも、それでも部下のジルとコニアは「あなたに着いて行くと誓った」と彼に忠誠を示し、再起したアメジオも「今の俺…いや『俺たち』に何ができるか、力を貸してくれ」と、共に新たな道を模索し始めます。苦しみながらも我が道を往く強さと、その過程で仲間との信頼を深めていく様子は、もはや裏主人公と言っても過言ではありません。
100年の時を越えた運命

リコとアメジオの関係を語る上で欠かせないのが、両者の家系や過去から続く運命的な要素です。物語が進むにつれ、彼らの祖先や血筋が現在の冒険と深く結びついていることが明らかになってきました。約100年前、リコの先祖にあたる伝説の冒険者ルシアスと、アメジオの祖父でエクスプローラーズ現首領のギベオンは、仲間のリスタルと共に「エクスプローラーズ」を結成し幻の楽園「ラクア」を目指した冒険仲間でした。
冒険の過程でルシアスとギベオンの理念は分かれたとされ、その後ギベオンはエクスプローラーズのトップに、ルシアスは伝説として語り継がれる存在になりました。この先人たちの因縁が発端となり、彼らの血を引くリコとアメジオは、それぞれルシアスとギベオンの願いを受け継ぐ立場で対峙することになります。
このように、リコとアメジオの物語には祖先から受け継いだ謎や使命が色濃く影響しています。リコは偉大な冒険者の末裔として未知のポケモン・テラパゴスと出会い、祖母の意思を継いで冒険に身を投じました。一方アメジオもまた祖父の願いを背負い、先祖から続く悲願に挑んでいます。二人の出会いはまさに宿命とも言えるもので、過去と現在、そして未来を繋ぐ重要な意味を持っているのです。

ラクアでの共闘

最後に少しだけ、今後の展開に触れておきましょう。ラクア最終決戦のPVでは、リコとアメジオの2人が並び立ち、ギベオンのジガルデと対峙する姿が確認できます。もちろん、彼らがどういう経緯で共闘するに至るのかはまだ明らかではありません。ただ、半ば追放されたが故の「エクスプローラーズであってエクスプローラーズでない」という特殊な立ち位置が今後のアメジオの進む道にも影響する可能性は高いでしょう。
「目的は同じでも、道は異なる」と語ったアメジオが、リコと肩を並べて戦うという事実……そこに私たちは、「譲れない何かを抱えながらも、ときに手を取り合う」人間の姿を見ます。アメジオのテラスタル口上のように「我が道を貫いた」結果、どんな経緯で道が交わるのか。2人は、先人たちの残した志をどう受け止め、自分たちの未来を切り開いていくのか。最後まで見届けましょう。
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