「傷だらけの手で、私達は」を読む前のぼく
この時点ではまだストーリー未見です。ガチャを引きながらこんな展開になるんじゃないかと想像しています。
「傷だらけの手で、私達は」を読み終えたぼく
自分の性格はどちらかというと瑞希寄りだから、瑞希が挙げる嫌な理由には部分的に共感を覚えながらも、東雲絵名さんには光を求めてしまいます。何度折れてもまた立ち上がる強さを、論理に勝る激情を。
これまで傍観に徹してきたMEIKOが、初めて自らの意思を示す。これまでは「俯瞰で見る」ことがMEIKOの目的だと思っていたけど、本当に引き返せなくになってしまうタイミングを見極め、その時の自分の言葉に重みをもたせようとしていたのかなと感じた。とはいえMEIKOも焦燥感は見えていた。全てが計算ずくというより、その役割が必要だという信念のもとで動いていたように見える。
MEIKOの言葉で再び瑞希との対話を求める絵名は、瑞希との繋がりを辿っていく。彰人から杏へ、そして類へ。夏祭りの時は逆でしたが、本当に追い込まれている時は無駄な会話ゼロで問題解決に向かう東雲姉弟のバランスがすき。そして瑞希が秘密を打ち明けようとしていたことも知る男、神代類。結果だけ見ると瑞希を追い詰めてしまったので、類の絵名を見る目が厳しかったりするのかなと思ったけどそんなことはなく。絵名との直接的な関わりは少ないが、類は瑞希の変化を通して絵名たちを見ていたから、一定の信頼は得ていた様子。
瑞希と似た元同士でかつては孤独を分け合い、今は居場所を見つけられた類が絵名に伝えたのは、強引に壁を突破された自身の体験だった。今の瑞希にも、同様の強引さが必要なのかもしれないと。確かに最終的に絵名さんのパワーで押し切るというのは期待していた展開だけど、前回の引きからしてまず絵名さんが吹っ切れるための材料が必要だよなとも思っていて。その材料が類と司の話にに繋がるのは全然頭になかった。「最悪杏を通せばコンタクトを取れるけど、それが2人の関係を断つことにも繋がるかもしれない」という葛藤もだけど、ユニット外の交友も織り交ぜるのは丁寧な人間関係の積み重ねがあってこその描写だなと。
そしてそんな絵名の苦闘を奏とまふゆに隠し通せるはずもなく。問い詰められた絵名は「詳しいことは話せない」としながらも、瑞希と話す場を作る協力を願い出る。まふゆが瑞希の思考を先回りしつつ積極的に案を出す姿は、まふゆ自身の変化もそうだし、ニーゴの中では考え方が似ている2人の生存逃走でのやり取りを想起させる。
話し合いの結果、欠席が増えたことによる補習のタイミングを狙って待ち伏せをすることになったニーゴ一同。ただ瑞希視点だと待ち伏せされているかもというのは想像できるので、可能性を想像することでより気が重くなるのはすごいわかる。一旦現実から目を反らして好きなことに意識を向けるのも。土壇場でその行動に賭けた絵名がついに瑞希を捕まえる。
文化祭の時と同様に絵名の手を振り払い逃げる瑞希だが、そこにMEIKOが呼びかける。「絵名と向き合える最後の機会かもしれない」と。あのMEIKOがここまで言うなら本当に…となるので、実際その言葉は重い。こんなに必死な顔をするぐらいには感情移入しているのに、この時のために不干渉を貫き続けていたのだとするとすごい信念。
瑞希の足が止まっている間に絵名が追いつき、最後の対話が始まる。瑞希は「絵名が嫌な思いをするから」と絵名を理由に逃げようとするが、それは通用しない。「私のことはどうだっていい」し、「私は瑞希と離れたくない」から。
答えに詰まった瑞希もいよいよ感情を爆発させる。みんなの優しさにいちいち傷ついてしまう。そんな自分が友達でいていいのかと思ってしまう。だから「ボクが」嫌なんだと。これはちょっと自分では返す言葉が出てこないなと思っていると、絵名さんは瑞希が嫌だと思う理由を全力で否定する。瑞希が突き放すたび、どんどん声が大きくなっていく絵名さん。「なんでわからないの?」と、いつの間にか攻守が逆転している。感情のぶつけ合いになった時点でもう結果は決まっていたのかもしれません。
聞けてよかった。
いつものように、ナイトコードで。
元々抱えていた問題がしっかり解決したのは瑞希が初めてじゃないでしょうか。サイドストーリーの方で奏とまふゆ、バチャシン達にも秘密を打ち明けていたので。まふゆと絵名は目処が立ちつつも越えるべき壁はまだある状態で、奏に関してはほぼ進展なし。逆に次から瑞希バナーでなにやるんだろうと思ったりもします。なんにせよニーゴの空気感も少し変わりそうなので、次が楽しみです。
あれだけ激しく言い合った末に得たのが「安らぎ」の絵を描くヒントなのも絵名さんらしくて好きです。やっぱり力こそパワーだなと思いながらサイドストーリーを読んでいたら、論理でも力でも制圧できそうな人がいて笑っちゃいました(まふゆ後編参照)。
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