『マクロスΔ』とは? 作品概要と基本情報
あらすじと世界観
西暦2067年、銀河系辺境のブリージンガル球状星団。そこに存在する移民惑星群が、「マクロスΔ」の物語が展開される主な舞台です。「マクロスF」の時代から8年の歳月が流れたこの宙域では、人々が突如として自我を失い凶暴化する謎の奇病「ヴァールシンドローム」が猛威を振るっていました。この未曾有の危機に立ち向かうべく、星間複合企業体ケイオスは、歌の力でヴァールを鎮静化する戦術音楽ユニット「ワルキューレ」と、彼女たちを護衛する可変戦闘機部隊「Δ小隊」を組織。彼女たちは日夜、この脅威に立ち向かっています。
ワルキューレのメンバーは、「フォールドレセプター」と呼ばれる特殊な因子を持つ少女たちで構成されています。彼女たちの歌声に含まれる「生体フォールド波」は、ヴァール感染者の精神に作用し、その症状を抑制する効果を持ちます。しかし、これはあくまで対症療法に過ぎず、根本的な治療法はいまだ確立されていません。加えて、生体フォールド波の効果は録音されたものでは著しく低下するため、ワルキューレは危険な戦場で直接歌を届けることをその使命としています。
この独特な世界観を理解する上で鍵となるのが、古代星間文明「プロトカルチャー」の存在です。ブリージンガル球状星団にはプロトカルチャーの遺跡が数多く残されており、これらがヴァールシンドロームの発生や物語の核心に深く関わっているのです。
そして、物語における主要な対立軸を形成するのが、ケイオスと、ブリージンガル球状星団の惑星ウィンダミアを本拠地とする「ウィンダミア王国」です。ウィンダミア人は地球人類とは異なる進化を遂げた種族であり、平均寿命が30年と短命である一方、「ルン」と呼ばれる特殊な感覚器官と高い身体能力を有しています。彼らは新統合政府からの独立を宣言し、ヴァールを操る力を持つ「風の歌」を利用して、ケイオスと激しい戦いを繰り広げることになります。
製作背景とシリーズでの位置づけ

「マクロスF」から約8年の時を経て、待望のテレビアニメシリーズとして登場したのが「マクロスΔ」です。2016年4月から9月にかけて全26話が放送され、アニメーション制作は、長きにわたりマクロスシリーズを支えてきたサテライトが担当。シリーズの生みの親である河森正治氏とスタジオぬえが原作を手掛け、河森氏は総監督も務めました。本作は、マクロスのアニメ作品群において7作目、テレビアニメとしては4作目にあたります。
物語の舞台は西暦2067年。「超時空要塞マクロス」から約60年後、「マクロスF」からは8年後の世界が描かれます。可変戦闘機バルキリーによる息をのむメカアクション、物語の魂とも言える「歌」、そして心を揺さぶる三角関係の恋愛ドラマという、マクロスシリーズ伝統の三本柱は本作でも健在です。ただし、「マクロスΔ」では特に「歌」の要素が色濃く描かれており、その傾向は後に制作される劇場版で一層顕著になります。
その言葉を裏付けるように、音楽面では戦術音楽ユニット「ワルキューレ」が生み出す楽曲群が、現実世界でも空前の成功を収めました。オリコンチャートで1位を獲得するなど、マクロスシリーズの音楽タイトルとして初の快挙を成し遂げ、作品の世界観を現実へと拡張する大きな力となったのです。
『マクロスΔ』の物語を深く知る!TVアニメ版のストーリー解

物語の幕開けは、夢を見いだせず、やり場のない思いを抱えていた少年ハヤテ・インメルマンが、惑星アル・シャハルで運命の出会いを果たす場面から始まります。彼が出会ったのは、ワルキューレに憧れを抱くウィンダミア人の少女フレイア・ヴィオン、そしてワルキューレを護衛するΔ小隊のパイロット、ミラージュ・ファリーナ・ジーナス。ヴァールとの騒動に巻き込まれる中で、ハヤテはその天賦の操縦センスを、フレイアは類まれなる歌の才能を開花させ、それぞれΔ小隊とワルキューレへの道を歩み始めます。惑星ラグナを新たな拠点とし、彼らの運命が大きく動き出すのです。
しかし、平穏な日々は長くは続きません。フレイアの故郷であるウィンダミア王国が、新統合政府に対し突如宣戦を布告。ウィンダミアは、王子ハインツ・ネーリッヒ・ウィンダミアの「風の歌」を利用してヴァール感染を増幅させ、プロトカルチャー遺跡を次々と掌握し、戦局を圧倒的有利に進めます。この激戦の最中、Δ小隊の不動のエースパイロットであったメッサー・イーレフェルトが、ウィンダミア空中騎士団のエース「白騎士」ことキース・エアロ・ウィンダミアとの壮絶な一騎討ちの末、帰らぬ人となります。
戦局はますます緊迫の度を増し、ウィンダミアはプロトカルチャー遺跡群のネットワークを掌握することで「制風圏」を確立。時を同じくして、ワルキューレのミステリアスなエースボーカル、美雲・ギンヌメールの正体も明らかになります。彼女はプロトカルチャーの巫女「星の歌い手」のクローンであり、その事実はワルキューレとケイオス内部に大きな衝撃を与えました。一方、ハヤテもまた、フレイアの歌と共鳴することでヴァール化に近い危険な状態に陥るなど、過酷な試練に直面します。
最終決戦の裏では、ウィンダミアの宰相ロイド・ブレームが、星の歌い手の力を利用して全銀河の意識を統合するという計画を推し進めていました。絶体絶命の窮地で、ハヤテはフレイアへの想いを統合された意識の中で告白します。ワルキューレとΔ小隊は、ロイドの計画に反旗を翻したキースら一部の空中騎士団の加勢を得て美雲を奪還し、ロイドの野望を打ち砕きます。キースはロイドを討ち、沈みゆくシグル・ヴァレンスと運命を共にしました。戦いを終え、結晶化が進み始めたフレイアの身体は、種族の違いゆえに同じ時間を生きられないという過酷な現実を突きつけますが、ハヤテは「ずっと一緒だ」と揺るがぬ愛を伝え、フレイアもまた「覚悟するんよ」とそれに応えます。改めて互いの想いを確かめ合った二人が、その後どのような時間を過ごしたのかは、観る者の想像に委ねられる形で、物語は幕を下ろします。
個性豊かな登場人物たち!キャラクター紹介
「マクロスΔ」の魅力は、戦術音楽ユニット「ワルキューレ」、可変戦闘機部隊「Δ小隊」、そして敵対する「空中騎士団」をはじめとする、多彩で個性的なキャラクターたちにあります。本項では、それぞれのグループに所属する主要な登場人物と、その声優陣を紹介します。
ワルキューレメンバー紹介(各キャラクター詳細)

キャラクター名 | 声優 | 役割・特徴 |
---|---|---|
フレイア・ヴィオン | 鈴木みのり | ウィンダミア出身の新メンバー。天真爛漫で好奇心旺盛。感情が高ぶるとルンが輝く「ルンピカ」状態になり、歌の力も強まる。 |
美雲・ギンヌメール | 小清水亜美/歌:JUNNA | 年齢・経歴一切不明のミステリアスなエースボーカル。その正体は「星の歌い手」のクローン 。 |
カナメ・バッカニア | 安野希世乃 | ワルキューレのリーダー。元ソロアイドル。しっかり者で面倒見が良い 。 |
レイナ・プラウラー | 東山奈央 | 寡黙な凄腕ハッカー。ゾラ人。毒舌家な一面も。マキナと非常に仲が良い 。 |
マキナ・中島 | 西田望見 | 明るく元気なメカニック兼ボーカル。露出の多い衣装を好み、「歌は希望!」が決め台詞。レイナと非常に仲が良い 。 |
戦術音楽ユニット「ワルキューレ」は、星間複合企業体ケイオスに所属し、ヴァールシンドロームを歌の力で鎮静化するために結成されました 。メンバーは高いフォールドレセプター適性を持つことが条件であり、戦場で歌う覚悟も求められます 。平時にはワクチンライブを開催し、ヴァール発症リスクを低下させる役割も担っています 。
さらに、ワルキューレの特異性は、担当声優(美雲の歌唱担当であるJUNNAさんを除く)がキャラクターの声を演じるだけでなく、現実世界でもワルキューレとしてライブ活動や音源リリースを行う点にあります 。これは、キャラクター、演者、そして観客の間に通常よりも強固な絆を生み出し、フィクションと現実の境界を曖昧にする効果をもたらします。ファンは、アニメの中のキャラクターたちの歌を、声優たちの実際のパフォーマンスを通じて体験することで、より深い没入感を得ることができます 。ワルキューレが現実の音楽グループとしても成功を収めたことは 、この強力な相乗効果の証左と言えるでしょう。
Δ小隊メンバー紹介(各キャラクター詳細)

キャラクター名 | 声優 | 搭乗機 (主なもの) | 役割・特徴 |
---|---|---|---|
ハヤテ・インメルマン | 内田雄馬 | VF-31J ジークフリード、VF-31F、VF-31AX カイロスプラス | 主人公。当初は目的意識が薄いが、天性の操縦技術を持つ。フレイアの歌と共鳴する。「踊るように」飛ぶと評される。 |
ミラージュ・ファリーナ・ジーナス | 瀬戸麻沙美 | VF-31C ジークフリード | 真面目で努力家なパイロット。伝説的なパイロット、マクシミリアン・ジーナスとミリア・ファリーナの孫。 |
メッサー・イーレフェルト | 内山昂輝 | VF-31F ジークフリード | Δ小隊のエース。「死神」の異名を持つ。カナメの歌を頼りにヴァールシンドロームと戦っていたが、キースとの戦いで戦死。 |
アラド・メルダース | 森川智之 | VF-31S ジークフリード | Δ小隊隊長。経験豊富で面倒見が良い。ハヤテの父ライト・インメルマンの元部下 。 |
チャック・マスタング | 川田紳司 | VF-31E ジークフリード | 陽気なムードメーカー。惑星ラグナ出身で、自信が経営する飲食店「裸喰娘娘」調理人としての顔も持つ。 |
空中騎士団メンバー紹介(各キャラクター詳細)

キャラクター名 | 声優 | 搭乗機/役割 | 特徴 |
---|---|---|---|
キース・エアロ・ウィンダミア | 木村良平 | Sv-262Hs ドラケンIII(白騎士機) | 「白騎士」の異名を持つ空中騎士団のエース。王家の血を引くが、弟ハインツに王位を譲り騎士の道を選ぶ。 |
ロイド・ブレーム | 石川界人 | シグル・ヴァレンス | 知略に長けたウィンダミア王国の宰相。キースの幼馴染。プロトカルチャー研究の権威でもある。物語の真の黒幕。 |
ボーグ・コンファールト | KENN | Sv-262Ba ドラケンIII | 空中騎士団の最年少メンバー。血気盛んで、地球人やワルキューレの歌を激しく嫌悪する。 |
ヘルマン・クロース | 遠藤大智 | Sv-262Ba ドラケンIII | 空中騎士団の最年長メンバー。元教官。ボーグの師匠的存在。 |
カシム・エーベルハルト | 拝真之介 | Sv-262Ba ドラケンIII | 元リンゴ農家。短命である自らの運命と息子の将来を案じている。 |
テオ・ユッシラ/ザオ・ユッシラ | 峰岸佳 | Sv-262Ba ドラケンIII | 双子の騎士。青髪が兄のテオ、紫髪が弟のザオ。 |
ハインツ・ネーリッヒ・ウィンダミア | 寺崎裕香/歌:メロディー・チューバック | 「風の歌い手」(ウィンダミア国王) | ウィンダミアの王子(後に国王となる)。強力な「風の歌」を操るが、その力は彼の体を蝕む。 |
フレイア役の鈴木みのりさんとハインツ役の寺崎裕香さんは、後にアニメ「ポケットモンスター」でW主人公を務めることになります。
その他主要キャラクター

- ケイオス / マクロス・エリシオンクルー
- アーネスト・ジョンソン艦長(声:石塚運昇):マクロス・エリシオンの艦長。ゼントラーディと地球人のハーフで、元新統合軍の教官。ウィンダミアの国王・グラミアはかつての教え子。
- ベス・マスカット(声:沢井美優)、ミズキ・ユーリ(声:金魚わかな)、ニナ・オブライエン(声:辻美優):マクロス・エリシオンのブリッジオペレーターたち。
- ウィンダミア王家
- グラミア・ネーリッヒ・ウィンダミア(声:てらそままさき):ウィンダミア国王。キースとハインツの父。後にロイドの手で殺害される。
- イプシロン財団
- ベルガー・ストーン(声:藤原啓治→小形満):銀河規模の巨大財閥イプシロン財団の幹部。ウィンダミアを含む各勢力に兵器や物資を供給し、暗躍する。
- 新統合軍
- ライト・インメルマン(声:荻野晴朗):ハヤテの亡父。元新統合軍の特務諜報員。第一次ウィンダミア独立戦争での次元兵器使用疑惑など、謎多き人物。幼い頃のフレイアに音楽プレイヤーを渡した張本人でもある。
- アルベルト・ララサーバル(声:大隈健太):ヴォルドール航空団のエース。ヴァール化していたところをフレイアの歌に救われる。
TVアニメを再構成した劇場版前編!「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」
2018年2月、「いつか この声が果てる その日まで」というキャッチコピーと共に公開された「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」。本作は、テレビアニメシリーズ全26話を約2時間の劇場版として再構成した作品です。単なるダイジェストではなく、物語をワルキューレ5人の視点から再構築し、多数の新規映像や新作楽曲を投入することで、新たな魅力を持つ独立した作品へと昇華されています。
河森正治総監督が「改・構成」と称するように、TVシリーズのカットを使用しながらも、異なる時系列や場所、人物などを置き換える形でストーリー展開には大胆に手が加えられました。総カット数2100~2200のうち、既存バンクの流用は約1,000カット、バンクに作画のやり直し等の手を加えた「バンク+α」が約700カット、残る約500カットは新規で制作され、映像面でも大幅なパワーアップを遂げています。物語の主軸も、テレビ版で描かれた三角関係の要素はやや抑えられ、ワルキューレというユニットの物語がより前面に押し出されています。例えば、物語冒頭ではハヤテは既にΔ小隊に所属しており、フレイアとは貨物船でヴァールに襲撃される中で出会うなど、キャラクターたちの出会いのシチュエーションから変更されています。また、メッサーのとキースの一騎打ちやウィンダミアとの最終決戦の展開も、テレビ版とは異なる様相を呈しています。
物語の大筋はテレビ版を踏襲し、ヴァールシンドロームと戦うワルキューレとΔ小隊、そしてウィンダミア王国との対立を描きます。2時間という凝縮された尺の中に、フレイアのワルキューレ加入、メッサーの最期、美雲に隠された秘密、そしてプロトカルチャーシステムを利用したロイドの銀河意識統合計画との最終決戦といった、物語の核心となる出来事が濃密に盛り込まれています。そして結末では、ウィンダミアが新統合政府に和平を申し入れ、戦争終結への道筋が示されます。

音楽面では、ワルキューレ待望の新曲として「チェンジ!!!!!」と「ワルキューレは裏切らない」が追加されました。特に「チェンジ!!!!!」のライブシーンは、キャラクターを含め全編が3DCGで描かれるという初めての試みがなされ、観客に強烈な印象を残しました。エンディングテーマには「Dancing in the Moonlight」が起用され、もちろん「一度だけの恋なら」や「ルンがピカッと光ったら」といったテレビシリーズの人気楽曲も多数使用され、物語を彩ります。
この劇場版における「改・構成」は、ワルキューレと主要な紛争に焦点を絞ることで物語の密度を高め、既存ファンにはTVシリーズとは異なる新たな解釈や感動を提供するとともに、新規の観客にとっても独立した作品としてマクロスΔの世界に触れやすい完成度を実現しています。26話のエピソードを約2時間に凝縮するにあたり、ワルキューレ中心へと物語の軸足を移したのは、どうしても説明が不足しがちな部分を、彼女たちの歌の力を借りて通す意図があったと河森総監督は語っています。ハヤテが冒頭からΔ小隊に所属しているといった変更は、物語序盤のテンポを格段に速め、観客を一気に物語へ引き込む効果を生んでいます。
TVアニメ版との主な相違点

- ハヤテとフレイアの出会いの状況
- フレイアの誕生日を迎えるタイミングとそれに伴う出来事
- メッサーと白騎士の一騎打ちの結末
- ハヤテとフレイアの歌による共鳴現象の描かれ方
- ハヤテとフレイアの関係性の進展具合
劇場版後編で描かれる新たな物語!『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』
テレビシリーズを再構成した前編「激情のワルキューレ」から約3年8ヶ月。待望の完全新作として、2021年10月に「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」が公開されました。
『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』のあらすじと見どころ

キャッチコピーは「歌うことは 生きること」「逝かせてあげる 堕天使の歌で」「銀河争奪歌合戦」。物語の舞台は、「激情のワルキューレ」後の世界。ウィンダミア王国と新統合政府との戦争がひとまずの沈静化を見せた時代で、レディMによる現行秩序の破壊を目論む武装組織「ヘイムダル」と、ワルキューレおよびΔ小隊の新たな戦いを描く、完全オリジナルストーリーです。
本作で最大の焦点となるのは、Δ小隊のハヤテ・インメルマンとワルキューレのフレイア・ヴィオン、二人の関係が進展し、どのような結末を迎えるのかという点です。フレイアに課せられたウィンダミア人特有の短い寿命という過酷な運命が重くのしかかる中、彼らが紡ぐ愛の行方は、観る者の心を強く揺さぶります。新たな脅威として、ワルキューレと瓜二つの姿を持つ謎の音楽ユニット「Yami_Q_ray(ヤミキューレ)」が登場。ワルキューレとYami_Q_rayによる、文字通りの「銀河争奪歌合戦」が激しく繰り広げられます。さらに、Δ小隊のミラージュ・ファリーナ・ジーナスの祖父であり、マクロスシリーズの歴史に名を刻む伝説の天才パイロット、マクシミリアン・ジーナス(マックス)が物語の鍵を握る人物として深く関わってくるのも、長年のファンにはたまらない展開と言えるでしょう。

見どころは、完全新作だからこそ可能な予測不能のストーリー展開、ハヤテとフレイアが辿り着く愛の結末、そしてワルキューレとYami_Q_rayがステージと戦場で繰り広げる圧巻のライブパフォーマンスです。マックスが、かつて「マクロスF」の主人公・早乙女アルトも搭乗した「YF-29 デュランダル」を駆って登場するシーンは往年のファンを歓喜させ、Δ小隊の新たな主力機「VF-31AX カイロスプラス」の目覚ましい活躍もメカファン垂涎の的です。
本作は、「生きること」「歌うこと」というマクロスシリーズの根幹を成すテーマを、フレイア・ヴィオンという一人の少女の人生を通じて描きます。ウィンダミア人としての宿命である短い寿命、異なる時を生きる地球人を愛したからこその葛藤、そして激化するヘイムダルとの戦いは、そのテーマ性をより一層色濃く映し出します。「なんのために生き、なんのために歌うのか」──フレイアが自問自答の果てに選び取った結末は、制作陣が「フレイアが自ら、作品を飛び出し、この結末を選択した。キャラクターが自ら動いた」と語るほど。
劇場版後編の新キャラクター・メカニック
キャラクター

名称 | 声優 | 詳細 |
---|---|---|
闇雲 | 小清水亜美/歌:JUNNA | シャロン・アップル型の量子AIに星の歌い手細胞を組み込んだヴァーチャロイド。決め台詞は「歌は闇」。 |
闇フレイア | 鈴木みのり | 闇雲がワルキューレの歌を解析して生み出したヴァーチャロイド・ユニット「Yami_Q_ray」の1人。決め台詞は「歌は狂気」。 |
闇カナメ | 安野希世乃 | 「Yami_Q_ray」の1人。決め台詞は「歌は歓喜」。 |
闇レイナ | 東山奈央 | 「Yami_Q_ray」の1人。決め台詞は「歌は欲望」。 |
闇マキナ | 西田望見 | 「Yami_Q_ray」の1人。決め台詞は「歌は絶望」。 |
マクシミリアン・ジーナス | 速水奨 | ケイオス・リスタニア支部所属マクロス・ギガシオン艦長。ミラージュの祖父で、伝説の天才パイロット 。 |
エキセドル・フォルモ | マクロス・ギガシオン参謀。かつてマックスと共にマクロス7船団を率いた。 | |
イアン・クロムウェル | 斉藤次郎 | レディMを「圧政者」として打倒を掲げる組織「ヘイムダル」の首謀者。元新統合軍人 。 |
シドニー・ハント | 櫻井孝宏 | クロムウェルを支援するイプシロン財団の実力者。 |
ヨハン・ウインリー | 小野大輔 | ウィンダミアの神官。フレイアを幼い頃から知る人物であり、ハヤテの父・ライトとも面識がある。 |
Yami_Q_rayは、美雲と同じ星の歌い手細胞から作られたクローンでありつつ、より兵器としての側面を強調した形で描かれる。シャロン・アップル型の量子AIシステムとの組み合わせでワルキューレの歌声を学習し、1人分の細胞でワルキューレ5人に匹敵する歌の力を発揮するまでに至りました。
メカニック
名称 | 搭乗者 | 詳細 |
---|---|---|
VF-31AX カイロスプラス | Δ小隊 | カイロスとジークフリードを組み合わせた改修機。増設したフォールド・クォーツとワルキューレの歌が共鳴しパワーアップする。 |
マクロス・ギガシオン | マックス/アラド | ケイオス・リスタニア支部の旗艦となるマクロス級戦艦。 |
YF-29 デュランダル | マックス | かつて早乙女アルトが搭乗したことでも知られる、最新鋭機。 |
バトル・アストレア | クロムウェル | ヘイムダルの旗艦。「セイレーンデルタシステム」など、プロトカルチャーの遺産を内蔵する。 |
Sv-303 ヴィヴァスヴァット | ヘイムダル | バトル・アストレア搭載の無人可変戦闘機(ゴースト)。Yami_Q_rayの歌声で遠隔操作される。 |
劇場版の楽曲について

曲名 | アーティスト | 備考 |
---|---|---|
唇の凍傷 | ワルキューレ | 挿入歌 |
りんごのうた | フレイアΔ鈴木みのり | 挿入歌 |
つらみ現在進行形 | ワルキューレ | 挿入歌 |
未来はオンナのためにある -movie edition- | ワルキューレ | 挿入歌 |
ワルキューレはあきらめない | ワルキューレ | 挿入歌 |
絶対LIVE!!!!!! メドレー | ワルキューレ | 挿入歌 |
ALIVE 〜祈りの唄〜 | ワルキューレ | 挿入歌 |
宇宙(そら)のかけら | ワルキューレ | 挿入歌 |
ルンに花咲く恋もある -movie edition- | ワルキューレ | エンディングテーマ |
Glow in the dark | Yami_Q_ray | 挿入歌 |
Diva in Abyss | Yami_Q_ray | 挿入歌 |
綺麗な花には毒がある | Yami_Q_ray | 挿入歌 |
Heinz vs. Yami_Q_ray | ハインツ、Yami_Q_ray | 挿入歌 |
これらの楽曲を収録したオリジナルサウンドトラックや、ボーカルソング集「Walkure Reborn!」もリリースされています 。
3Dで描かれる圧巻のライブ映像と共に物語の幕を開ける「唇の凍傷」、クライマックスでフレイアとワルキューレの感情とシンクロするように響き渡る「ワルキューレはあきらめない」「ALIVE 〜祈りの唄〜」「宇宙のかけら」など、本作の楽曲は単なるキャラクターソングの枠を超え、物語と一体となった強力な演出として機能し、観る者の魂を揺さぶりました。
マクロスΔの核心となるテーマやメッセージ

「マクロスΔ」は、単なるエンターテイメント作品に留まらず、観る者に「生きるとは何か」「限りある時間の中で何を成すか」といった問いを投げかけます。そのテーマやメッセージは、登場人物たちの葛藤や決断、そしてそれを演じる声優たちの言葉からも深く感じ取ることができます。
「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」の舞台挨拶で、ハヤテ・インメルマン役の内田雄馬さんとフレイア・ヴィオン役の鈴木みのりさんは、それぞれが感じ取った作品のテーマについて、以下のように語っています。
内田「この作品は、“選択する”という事が大切なテーマの一つだったんじゃないかと思っている。フレイアは出会った頃から命懸けでいたし、彼女の決断を、ハヤテが自分の意志で、歌い切るまで俺が一緒に戦う、と言えるようになるまで6年かかったが、ここまでやってこれた事が嬉しい。彼らと共に人生を過ごしてこれた事が幸せだと思っている」
内田さんの言葉は、ハヤテがフレイアと共に生きることを選び、彼女の運命を受け止め、支え続けるという「選択」の重みを浮き彫りにします。
鈴木「『マクロスΔ』は、“誰かと、何かの為に、一緒に生きていく”というのがテーマだったのかなと思っている。フレイアの生き様が、皆様のこれからの毎日に、何かきっかけが起こる様な存在になればいいなと思います」
鈴木さんの言葉の通り、ハヤテとフレイアは、物語の中で「誰と、どう生きるか」を選んだ。
そして、この「選択」というテーマは、戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のリアルライブ活動にも色濃く反映されています。作品の完結をもってユニットとしての活動にも一つの区切りをつけるという決断は、彼女たちが自らの意志で「終わり方を選択した」ことの証左です。レイナ役の東山奈央さんが「本当はまだ終わりたくない、この5人ならなんだってできる」という万感の思いを口にしつつも、この決断を「誇り高く、美しいこと」と称したことは、その象徴的な出来事と言えます。
作品の哲学にも影響を与えたワルキューレのリアルライブ

ワルキューレのリアルライブ活動は、単なるアニメ作品の派生イベントに留まらず、作品そのもののテーマ性や制作過程にまで影響を与えるという、稀有な現象を引き起こしました。
TVアニメ終了後の2017年に行われたワルキューレ2ndライブ。その本番前に、スタッフから「(マクロスΔの)続きはやらないみたいですよ」という言葉をメンバーが耳にしてしまいます。特に鈴木みのりさんと西田望見さんは号泣するほど動揺したと言いますが、この出来事が結果的に5人の結束をより強固なものへと変えました。そして迎えたライブ本番、これが最後かもしれないという覚悟から生まれた鬼気迫るパフォーマンスは、会場を熱狂の渦に巻き込みました。そのステージを目の当たりにした河森正治総監督は、「ワルキューレをここで終わらせてはいけない。許されるならデルタを続けたい」と強く感じ、その想いが劇場版前編「激情のワルキューレ」の制作へと繋がったのです。
まさに、ワルキューレの5人が自らの歌で運命を変えた瞬間でした。このエピソードは、ワルキューレの代表曲の一つである「Absolute5」の歌詞「一人でも欠けたら意味を失ってしまうから」というフレーズに、より深い文脈と説得力を与えました。「5人でひとつのワルキューレ」という概念は、この出来事を通じて大きく育まれ、それは後の「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」におけるワルキューレの在り方や、彼女たちの行動原理にも深く影響を与えたと言えるでしょう。
そして、リアルのワルキューレとしての活動もまた、作品の完結という大きな節目に合わせ、ラストミッションと銘打ったファイナルライブツアーで、持ち曲のほぼ全てにあたる50曲を歌い上げるという形で、その輝かしい歴史に幕を下ろしました。これは決してネガティブな終わりではなく、本来ならば道半ばで途切れてしまう可能性もあった物語を、彼女たち自身が「自分たちの意志で終わり方を選ぶ」というところまで辿り着いたことの証です。それは、内田雄馬さんが語った「選択する」という作品の根幹テーマを、ワルキューレ自身が最後まで貫き通した結果と言えるのではないでしょうか。
『マクロスΔ』を彩る名曲たち!楽曲紹介
ワルキューレの音源一覧
シングル
アルバム
![]() | Walkure Attack! |
![]() | Walkure Trap! |
![]() | ワルキューレがとまらない |
![]() | Walkure Reborn! |
![]() | デカルチャー!!ミクスチャー!!!!! |
![]() | Absolute LIVE!!!!! |
![]() | W encore |
ライブ映像
![]() | LIVE 2017 “ワルキューレがとまらない” at 横浜アリーナ |
![]() | LIVE 2018 “ワルキューレは裏切らない” at 横浜アリーナ |
![]() | ワルキューレ LIVE 2022 ~Walküre Reborn!~ at 幕張メッセ |
![]() | ワルキューレ FINAL LIVE TOUR 2023 ~Last Mission~ at 東京有明アリーナ |
サウンドトラック
主題歌・挿入歌一覧
OPテーマ
TV1期:一度だけの恋なら
TV2期:絶対零度θノヴァティック
EDテーマ
TV1期:ルンがピカッと光ったら
TV2期:破滅の純情
劇場版前編:Dancing in the Moonlight
劇場版後編:ルンに花咲く恋もある
『マクロスΔ』Blu-ray&DVD情報(TVシリーズ・劇場版)
『マクロスΔ』の最新情報と今後の展開
マクロスΔ×HANA・BIYORI ようこそ!ワルキューレ・ガーデンへ

スパロボYにマクロスΔ参戦

もうすぐ10周年!『マクロスΔ』の尽きない魅力とこれから

2016年の放送開始から、私たちを熱狂させ続けてきた「マクロスΔ」。歌と愛と戦いの物語は完結を迎え、戦術音楽ユニット「ワルキューレ」もその活動に一つの区切りをつけましたが、彼女たちが灯した希望の光は、決して消えることはありません。そして、まもなく迎える2026年の10周年という大きな節目に向けて、ファンの期待はますます高まっています。
来るべき10周年に、私たちは何を期待できるでしょうか。具体的な発表はまだありませんが、キャスト陣が集う記念イベントの開催や、かつてのマクロスF10周年記念シングル「Good job!」のようなワルキューレ待望の新曲リリース、そして何よりも、再びあの熱狂を体験できるワルキューレのライブパフォーマンスに、多くのファンが胸を膨らませているはずです。直近では、据え置きスパロボへの初参戦というビッグニュースも飛び込んできました。スパロボシリーズならではのif展開やクロスオーバーも期待され、発売後にはファンの間で新たな熱狂が生まれることは間違いないでしょう。ワルキューレは永遠なのでね。10周年のその先も楽しみましょうね。
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