
「そして、針は動き出す」のあらすじ

母親と向き合い、自分の気持ちを伝えようと心に決めるまふゆ。同じ頃、まふゆの母親も『まふゆの気持ちを何よりも尊重しよう』と誓う。そうして話し合いの日、ふたりは久々に顔を合わせて互いの想いを語りだす——。

「そして、針は動き出す」ストーリーの構造

物語は、「Unreliable Notes」での決断を経て、まふゆが母との久しぶりの対面を果たし家に戻ることから始まる。

3-4話では家に戻ったまふゆと母の新たな関係模索が進み、母が変わろうと努力する姿と一旦は改善する親子関係が示される。

5-6話になると転機が訪れ、母の言動に過去の価値観が時折顔を出し始める。まふゆは関係修復への希望と再び傷つく恐れの間で揺れ動く一方、母はカウンセリングを受けるなど本気で変化しようとする。それでも母は無意識のうちに、よかれと思って昔の態度に戻りつつあり、再会からは素の状態で接していたまふゆも「いい子」の仮面を再び被ってしまう。
8話のクライマックスでは、まふゆの進路について再び母の価値観が表出し、父と奏の介入によってまふゆが本音を告げ、まふゆは再び奏の家に戻る形で物語が締められた。
キャラクターの動き
まふゆ

母との関係修復に向けて一歩を踏み出したのは大きな変化。再び一緒に暮らす過程で母が本気で変わろうとしているのはまふゆ自身も感じていて、だからこそ母に疑念を持ってしまう自分を責めてしまう。母が悲しまないようにと再び「いい子」の仮面を被って接するが、その結果母にとっても悪い方向に進んでしまったのがなんとも皮肉な結末でした。
まふゆ母

まふゆと一緒に料理したりニーゴの曲を聴いたりと、本心からまふゆの想いを理解しようと努力する姿が描かれた。自分的にも序盤は「裏があるのでは?」と半信半疑だったが、カウンセリングを受けようとしているのを見てさすがに信じました。自分だけで解決できないことを認め、他者を頼るのは勇気がいることなので。
それでも最終的にはうまくいかず、長年の習慣や価値観を変えることの難しさを感じてしまう。深刻度は大きく違えど、自分の癖を抑えようとする時に似たようなルートをたどることは自分の体験としてもよくあるので。短時間なら気を張っていられるが、慣れてきたころに無意識のうちに出てしまうというやつ。
そもそもまふゆ母がなぜ過干渉気味になってしまったのかはずっと気になっているポイントなので、どこかで掘り下げてほしいところ。まふゆの葛藤も、優しい母と冷たい母の思い出が混在していることからきているものなので。
まふゆ父

まふゆ父は一貫して善良な人で、実際にまふゆの限界が近いことに気付いて介入してもいる。ただ、序盤のまふゆが家に戻ったとしてうまくいかない可能性を全く考えていないような様子からして、今回は楽観的すぎたように思います。逆にまふゆ父しか知らないまふゆ母の姿もあるのだろうとは思うけど、それを加味してもね。
ニーゴ

3人とも基本的にはまふゆを心配しつつ、母との関係が改善することを願う立ち回り。ナイトコードでの作業中に母が嬉々としてまふゆの進路について語るシーンは、違和感が決定的になりつつ、まふゆ母の悪意のなさも強調する形になった。
まとめると

まふゆと母の和解が最序盤できたからもう一波乱あるだろうと思ってはいたけど、お互いに本気で改善しようとした結果致命的にすれ違うという結末は想像していませんでした。これならまふゆ母がラスボスのままでいてくれたほうが楽だったかも。
あそこでまふゆ母のスイッチが入らず、実際にカウンセリングを受けるところまで行っていれば丸く収まっていたかもしれないと思うとしんどい。とはいえ、まふゆが母の悲しみに過敏に反応してしまうのも母のこれまでの積み重ねの結果なので、自分のしたことが返ってきただけと言われればそれまでなんですが。
リアルに別々で暮らすぐらいのバランスがちょうどいいのかもと個人的には思います。結果的にまたこじれてしまったのをふまえると、受験生のまふゆにこれ以上負荷をかけるのもリスクだし。少なくとも母が本気で変わろうと思っただけでも進展ではあると思うので。
受験が終われば母の干渉欲も減るだろうし、大人になってお互い余裕ができてから関係の改善を試みるのも悪くはないと思う。才能が覚醒するような展開はなく、ひたすら覚悟を決め続けた東雲絵名さんの話を思い出すと、なにかのきっかけでまふゆ母の思考が180度変わって解決しました的な展開は考えづらいし、割とあり得る展開じゃないかと。

今後のニーゴはどうなる?

「そして、針は動き出す」は「Unreliable Notes」との連作のようなストーリーでしたが、結末からしてまだまだ過程のお話という印象。
個人的には奏の問題がラスボスだと思っているので、まふゆの問題はここから先の1年ぐらいである程度着地が見えるのではないかと想像しています。あとは瑞希の問題は解決が見えていて、絵名さんは一生苦しみ続ける決意をしたという意味で解決しているのが現状のニーゴ。
今回の話の序盤に出てきた鍵の話だったり、6月のワールドリンクの最後のチャプターがまふゆだったりで、もうしばらくはまふゆの問題にフォーカスする期間が続きそうです。楽しみに待ちましょう。
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